2013年12月11日

二十四節気と七十二候のお話 その67

12月7日は二十四節気の「大雪」(だいせつ)。
そして、7日から11日は七十二候の「閉塞成冬」。
「そらさむく ふゆとなる」、あるいは「へいそくして ふゆとなる」と読みます。
「閉塞」とは「閉まり、塞がる」こと。
自然界でいったい何が閉まり、塞がれば、冬が始まると考えたらよいのでしょうか。
季節を決めるのは、地球と太陽の距離や位置関係です。
冬は太陽がもっとも遠ざかる季節のことと言い換えることもできるでしょう。
それを「遠ざかる」などといわず、何かが閉塞すると言い表しているところに詩的なセンスがあります。
この頃は、冷え込むと、青空もすっきりせず、鉛色をした雲が垂れ込めている日があります。
そういうときには確かに、我々の居る地上と、太陽が輝く天上との間の見えない扉が閉まっているような気がします。
その扉が閉まると冬が始まるのです。
それに対し、春が来て開く扉は、地中と地上の間にあるような・・・。春先には「蟄虫啓戸(すごもりむし とを ひらく」という七十二候がありましたっけ。
あれは明らかに、地中と地上の間にある見えない扉が開くのだと思います。

倉橋みどり
posted by アルカからのお知らせ at 23:01| Comment(0) | 七十二候

二十四節気と七十二候のお話 その66

12月2日から6日までは七十二候の「橘始黄」。「たちばな はじめて きばむ」と読みます。
橘の実が色づき始める頃という意味になります。
橘とは柑橘類の一種で、ひな飾りにもなっている「右近の橘」を思い浮かべる人も多いでしょうが、昔は、今、私達が橘と呼んでいる品種だけではなく、柑橘類全般を指していたようです。
昔といえば、ここのところ『古事記』をテーマにした仕事を引き受けている私の脳裏には、橘といえば多遅摩毛理(たぢまもり)の伝説。
多遅摩毛理は、垂仁天皇から、常世国(とこよのくに)に行き、ときじくのかくの木実(このみ)をとってくるよう命ぜられます。
「ときじくのかくの木実」とは、よく不老長寿をかなえる実と解されますが、『古事記』の原文にはそのようなことは書いておられず、手元にある小学館『日本古典文学全集』版の注釈にも、「時を定めず、常に輝く木の実」という意味で、「(当時の)今の橘をさす」と書かれてあります。
さて、多遅摩毛理は結局、常世国まで行き着いて、この木の実を持ち帰ってきます。
ここのところの『古事記』の記述は実に具体的で、「葉がついたまま折り取った枝や、葉を取り去って実だけがついた枝を八組」持ち帰ったとあります。
ちなみに原文では「縵八縵(かげやかげ)・ 矛八矛(ほこやほこ)」とあります。まるで呪文のような不思議な言葉です。
命令を果たした多遅摩毛理を待ちうけていたのは、天皇の訃報でした。
そこで、8組あった2種類の枝のうち、4組を皇后に差し上げ、残りの4組を天皇の御陵の戸に捧げ置き、木の実だけをもぎとって高く掲げ、
多遅摩毛理は大声で泣きながら、亡くなってしまいます。
このとき、彼は「この実を持って参上し、おそばに仕えます」と絶叫したと書かれています。
『古事記』のこの部分を何の先入観もなく読むと、「ときじくのかくの木実」は不老不死を叶えてくれる果実というよりは、神聖なお供えものというイメージが残ります。
だって、153歳(!)まで生きたけれど亡くなってしまった天皇はともかくとして、木の実を持ち帰った多遅摩毛理自身も、その木の実を4組ももらった皇后も結局は亡くなってしまうのですから・・・。
そう考えると、冬至のお風呂に柚子を浮かべ、鏡餅のてっぺんに橙(だいだい)を飾るのも、香り高く、黄色く輝く柑橘類の神聖性の表れのように思えてなりません。

倉橋みどり
posted by アルカからのお知らせ at 22:33| Comment(0) | 七十二候

2013年11月27日

二十四節気と七十二候のお話 その65

11月27日から12月1日までは七十二候の「朔風払葉」。
「きたかぜ このはを はらう」と読みます。
「朔風」が「北風」という意味だということを初めて知りました。
「朔」を辞書で引くと、「月の黄経が太陽の黄経に等しいときの称」とあり、「きた。北方」とありました(『広辞苑』)。
朔日といえば、毎月1日のことで、詩人の萩原朔太郎も1日生まれなのでこの名前がつけられたのだといいます。
ではなぜ、「朔」が北という意味になるかというと・・・、東西南北で最初にくる(基準となる、といった方がよいかもしれません)のが北だからのようです。
確かにいつも北は天なり、です。
冷たい北風も天から与えられた風に違いありません。
「木の葉ふりやまず いそぐないそぐなよ」
加藤楸邨の名句を心の中でつぶやきながら、残り一ヶ月を切った今年を大切に過ごすことにしましょう。

倉橋みどり
posted by アルカからのお知らせ at 23:48| Comment(0) | 七十二候