2018年12月22日

【入江旧居の二十四節気】冬至

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2018年12月22日は冬至。
一年で昼の時間がもっとも短い日です。
私たちが生きていく上でなくてならない太陽の力が一年でもっとも弱まる日で、
この日には運に通じるからなのか、「ん」がつく名前のものを食べたり、
柚子湯に入って「ゆうずうが効く」ことを願いとよいといいます。
「ん」がつく食べものというと、「なんきん」。かぼちゃのことです。
わたしの故郷の山口では、かぼちゃと小豆の「いとこ煮」を食べたりしていました。
冬至というと、ある老舗の料亭の方の話を思い出します。
常連さんが冬至の時期に来られるというので、「ん」がつく食べものを盛り込んだ献立を出したところ、
大変喜んでくださったそうです。
縁起がいいと、翌年も、その翌年も・・・と予約を入れてくださるようになり、
うれしいけれど、だんだんネタ切れになりまして・・・、と溜め息をついておられました。
とっさによい案が思いつかず、「マンゴスチン」と答え、呆れた顔をされたような気がします。
入江泰吉先生は、冬至の日は何をめしあがったのでしょうか?
お酒が弱かったことと、ハイカラなもの(例えば、ドンクのフランスパンやデリカテッセンのレバーペースト)がお好きだったことは
聞いていますが、あまり縁起をかつがれたようなエピソードは聞いていません。
そういえば、「まつのはこんぶ」をいつも入江家からいただいた・・・という話を聞いたことがありました。
「こんぶ」も「ん」がつく食べ物。
件の料理長さんに久しぶりに連絡を入れてみましょうか。
奈良を代表する老舗です。
もしかしたら入江先生のお話も聞けるかもしれませんから。

   文 倉橋みどり 写真 石井均


posted by アルカからのお知らせ at 18:14| Comment(0) | 入江旧居

2018年12月07日

【入江旧居の二十四節気】大雪

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2018年12月7日は二十四節気の大雪。

入江泰吉旧居で長い間楽しませてくれた紅葉も終わりです。
日差しに映える紅葉も、黄昏時の少し翳りのある紅葉も、
どちらもとても美しいものでした。

紅葉が最高に美しい日。
入江旧居のソファに女性がひとり、座っておられました。
70歳代後半ぐらいでしょうか。
ご案内をしようと話しかけたとき、
その方が泣いておられることに気付きました。

「だめね、もうだいじょうぶかと思ったのだけど・・・」と小さな声でおっしゃるのです。
「何度もここに寄せてもらって、先生や奥様とおしゃべりをして・・・。
ほんとに楽しかったあ・・・・」。

涙をぽろぽろっとこぼしながら、
「ここが公開されるようになったって聞いて、すぐに来たかったんだけど、
少しこわくって。
だって、もう先生も奥様もおられなくなってしまったことが、まだうまくのみこめてなくて。
本当のことなんだって、思い知らされるでしょ」。

以前はこの旧居の近くにお住まいだったそうですが、
いまは引っ越して、奈良県外にお住まいのようです。
今日は、思いきって訪ねてくださったということでした。

「玄関を上がるのに、勇気がいったわ」
ともおっしゃるその人のそばに、
私はただ、うなずきながら、座っていることしかできませんでした。
しばらく静かな時間が過ぎて、
「やっぱり辛かったけど、来てよかったわね」。
自分に言い聞かせるようにおっしゃる顔は、とてもさびしそうに見えました。
「もしかしたら、これで、ここに来られるのも最後かも・・・、わたしももう年だから」。

ゆっくりと
ゆっくりと
小さくなっていく背中を見送りました。

入江泰吉先生が亡くなって26年。
まだまだ、思い出を大切に抱えている方々がおられます。
そういう方々にとって、
施設になってしまった今の旧居を訪れることは、少し辛い面もあるのだと改めて教えられたような気がしました。
写真家としての入江泰吉を称え、語り継ぐ場所であるだけでなく、
ひとりの人間としての入江先生をなつかしみ、奥様を思い出し、
静かに泣くことができる場所でもあり続けたい・・・。

そんなことを思いながら。

   文 倉橋みどり 写真 石井均



posted by アルカからのお知らせ at 08:27| Comment(0) | 入江旧居