2016年07月22日

【入江旧居の二十四節気】大暑

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 7月22日は二十四節気の大暑。
 一年で最も暑いころ、という言葉にぴったりの日々が続いています。

 梅雨が開けるのを待っていたようにいっせいに蝉が鳴き始めました。
  庭にも川向こうにも大きな木々が並ぶ入江泰吉旧居も一日中蟬時雨。ふっと時間の感覚が狂ってきて、ほんの数分だけ、と思って書斎に座っていただけなのに、気がつくと30分ほどになっていたり、その逆に長い間ぼんやりしてたな、と思ったのに、そうでもなかったり。
 書斎にかかっている時計が止まったままになっているからなのかもしれませんが。
 そういえば、入江先生の風景写真を見ているときも、すーっと引き込まれて、今自分がどこにいるのかー場所的にも時代的にもーぼんやりとわからなくなる、というより、気にならなくなってくるような気分になることがあります。
 実を言えば、私は最初から入江先生の作品のファンではありませんでした。美し過ぎて、整い過ぎている、と感じたからです。
 でも、奈良に住むようになり、奈良を取材したり、紹介する機会が増えてくるにつれ、入江先生が、どれだけ深い思いを一枚の作品に込めたのか、まだまだその全貌は理解できていないと思いますが、作品の厚みに気付くことができ、泣きたくなるほど好きになりました。
 とりわけ、失敗して落ち込んだときや、これでいいのかなと迷ったときに、入江先生の風景作品を見直します。
 奈良は深いよ、まだまだわかった気になったらだめだよ、と背中を押されるような気がして、気がつくと元気になれるからです。
  旧居の一般公開が始まって二度目の夏。
 入江先生も聞いたはずの蟬時雨に心を遊ばせることができる幸せを改めて噛み締めながら、秋の訪れを待ちたいと思います。


   文・倉橋みどり 写真・石井均

posted by アルカからのお知らせ at 20:54| Comment(0) | 入江旧居

2016年07月07日

【入江旧居の二十四節気】小暑

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 2016年7月7日は二十四節気の小暑。
 この暑さで、まだ小暑なの・・・と思いますが、七十二候では「温風至る」の始まり。「あつかぜ いたる」と口に出しただけで暑さが倍増しそうです。
 せめて蒸し暑さだけでもましにならないかと梅雨明けが待ち遠しくなります。
 とくに今夜は七夕。
 彦星と織姫が一年ぶりに逢瀬を楽しむ日です。最近では七夕を「サマーバレンタインデー」と呼ぶこともあるとか・・・。そんなことを思っていると、ふと入江先生が亡くなったあと、光枝夫人の談話をまとめた文章を思い出しました。

 「いつまでも生きていてほしかった。何と言っても、写真美術館のオープンを目の前にして亡くなったことが残念でなりません。それでも、生前にもっと何かしてあげればよかったというような悔いはありません。主人が撮影のために出かける時、何の心配もさせずに家から送り出すことが私の役目でした。思うように写真を撮って、いつ別れても悔いはないようにという覚悟を持って、ずっと二人で生きてきたのですから」。(『入江泰吉の奈良』新潮社より)

 ときどき旧居でのご案内でも朗読させていただく文章です。
 お子さんがおられなかったご夫妻。「ずっと二人で生きてきた」という言葉に潔さと重みを感じずにはいられません。
 お二人も七夕の夜、少しやきもきしながら夜空を見上げられたこともあったでしょうか・・・。
 旧居に関わるようになって一年半。
 入江先生のことを語るとき、思うとき、いつも必ず光枝夫人のことを語りたくなり、思い出すようになりました。同じ女性としても、入江先生を支えた光枝夫人についてもっと知りたいと思っています。


   文・倉橋みどり 写真・石井均
posted by アルカからのお知らせ at 23:23| Comment(0) | 入江旧居